・・・ 私のやる演題はこういう教育会の会場での経験がないのでこまりました。が、名が教育会であるし、引受ける私は文学に関係あるものであるから、教育と文芸という事にするが能いと思いまして、こういう題にしました。この教育と文芸というのは、諸君が主で・・・ 夏目漱石 「教育と文芸」
・・・私のしかつめらしい態度と堂々たる演題とに心を傾けて、ある程度まで厳粛の気分を未来に延長しようという予期のある矢先へ、突然人前では憚るべき異な音を立てられたのでその矛盾の刺激に堪えないからです。この笑う刹那には倫理上の観念は毫も頭を擡げる余地・・・ 夏目漱石 「文芸と道徳」
・・・ それで、先刻演題という話でしたが、演題というようなものはないから、何か好加減に一つ題は貴方がたの方で後で拵えて下さい。チョッと複雑過ぎて簡単な題にならんような高尚な事なんだろうと思う。何か御話しようと思いましたが、実は先刻申上げたよう・・・ 夏目漱石 「模倣と独立」
出典:青空文庫