・・・ジムバリストの絃の或る音や、「瀕死の白鳥」、或る小品の美が今も心に生きています。 フランス現代美術展覧会に陳列されたロダンの彫刻数点、クローデル嬢の作品も、深い感激を与えたものです。 読んだものの中では、「神曲」、ゲーテの作品数種。・・・ 宮本百合子 「外来の音楽家に感謝したい」
・・・ちょうど、瀕死の病人が、熱はだんだん低くなって来るし、脈の方は次第に数が殖えてきて、少々望みがなくなったので医者から親類に電報を打ちなさいと申し渡される。ちょうど今の日本の経済状態はそうなのです。財産税だけでは危くなって来て、なんとか処置を・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・分がわかり、結婚をする気でいた野心家の貴族との張り合い、その他所謂映画らしい、いきさつがあって、クリスチナが到頭退位してそのスペインの男が帰国する船へかけつけると、当の対手は敵役に決闘をしかけられ既に瀕死。クリスチナに介抱されつつ死ぬ。クリ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ポケットの手帖にかかれた瀕死の自画像によって。〔一九五一年三月〕 宮本百合子 「ことの真実」
・・・things which smile at you, And taste sweet. Life is good, by the Lord.” そして村に流行した疫病で、妻には死なれ、愛する孫娘は瀕死に陥っても尚彼は、その熾な目覚ましい・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・暑い日 さい 金魚、一匹を大きい二匹で追い廻して居るので、労って游がしょうかと思って居たら、瀕死にさせてしまったと、いう。 仕事をしかけて居る。 六月九日から十九日位まで曇か雨。形よく往来の梧桐が葉を出した。 前々夜見た自・・・ 宮本百合子 「「伸子」創作メモ(二)」
・・・悲しさでやっと我を支えているロザリーが、最後にドラの名を呼んだ時、瀕死の娘は、もう何とも云えない嫌気に満ちた溜息とともに、「あ、おかあさん!」とつぶやきました。 突然死んだドラの唯一人の仲よしであったベンジャミンは、翌日、夕刊に・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
・・・ 去る二月十六日午後から、日本にはインフレーション防止非常措置として、モラトリアムがしかれた。瀕死の病人の体温表をみると、脈搏の数は益々多く、高く高くと青線は下から昇りつめるのに、体温は、命数のつきるにしたがって、低く低くと衰えて来て、・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・私は過激な言葉をもって反対者を責め家族の苦しみを冒して、とうとう今日の正午に瀕死の病人を包みくるんだ幾重かの嘘を切って落とす事に成功した。肉体の苦しみよりもむしろ虚偽と不誠実との刺激に苦しみもがいていた病人が、その瞬間に宿命を覚悟し、心の平・・・ 和辻哲郎 「夏目先生の追憶」
出典:青空文庫