・・・これは前週の火曜日、即ち二月十三日の午後七時前後の事でございます。私はその時、妻に一切を打明けなければならないような羽目になってしまいました。これもそうするほかに、私たちの不幸を軽くする手段が、なかったのですから、仕方がございません。が、こ・・・ 芥川竜之介 「二つの手紙」
・・・即ち月曜日には孟子、火曜日には詩経、水曜日には大学、木曜日には文章規範、金曜日には何、土曜日には何というようになって居るので、易いものは学力の低い人達の為、むずかしいものは学力の発達して居るもののためという理窟なのです。それで順番に各自が宛・・・ 幸田露伴 「学生時代」
・・・先週の火曜日にそちらの様子見たく思い、船橋に出かけようと立ち上った処に君からの葉書来り、中止。一昨夜、突然、永野喜美代参り、君から絶交状送られたとか、その夜は遂に徹夜、ぼくも大変心配していた処、只今、永野よりの葉書にて、ほどなく和解できた由・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・あすは、火曜日。火曜日っていう字は、意地悪そうできらいです。 ニュウスをお知らせしましょうね。一、白蘭の和平調停を、英仏婉曲に拒否す。 そもそもベルギイ皇帝レオポオル三世は、そのあとは、けさの新聞を読んで下さい。二、廃船は意・・・ 太宰治 「俗天使」
・・・一九二五、四月一日 火曜日 晴今日から新らしい一学期だ。けれども学校へ行っても何だか張合いがなかった。一年生はまだはいらないし三年生は居ない。居ないのでないもうこっちが三年生なのだが、あの挨拶を待ってそっと横眼で威張・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・ 三、ポラーノの広場 それからちょうど五日目の火曜日の夕方でした。その日はわたくしは役所で死んだ北極熊を剥製にするかどうかについてひどく仲間と議論をして大へんむしゃくしゃしていましたから、少し気を直すつもりで酒石・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
七月○日 火曜日 散歩。 F子洗髪を肩に垂らしたまま出た。水瓜畑の間を通っていると、田舎の男の児、 狐の姐さん! 化け姐さん!と囃した。 七月○日 水曜日 三時過から仕度をし、T・P・W倶楽部・・・ 宮本百合子 「狐の姐さん」
・・・ 四日。火曜日、夜中の二時。 早寝をしているはずなのに、こんな時間に手紙を書いたのではすっかり馬脚をあらわしてしまいますね。しかし、今夜は眠る前ぜひ一筆かきたい。けさついた七月二十五日づけのお手紙のお礼を。 あれはまるであなたの・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・今夜は火曜日の夜で、今の家に移ってから火曜日と金曜日の午後を人に会う日にきめているので、三四人来て、かえったところです。林町の父にお歳暮に母のかたみの着物でどてらを縫って貰っていたのが出来上り。 私がこれをかくのは、ゆうべも考えてね、一・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 九月四日 火曜日 午後四時五十七分福井発。 もう福井駅に、避難民が来、不逞鮮人の噂ひどく女などは到底東京に入れないと云う。安樹兄、信州の妻の兄の家に止って居ろと云うが、荷物の大半をおき、只食糧だけ持ってのる。ひどいこみよう・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
出典:青空文庫