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・・・すぐ様、火蓋を切ったものか、又は、様子をうかがったものか、瞬間、迷った。ほかの七人も棒立ちになって、一人の中山服を見つめた。若し、支那兵が一人きりなら、それを片づけるのは訳のない仕事だ。しかし、機関銃を持って十人も、その中にかくれているか、・・・
黒島伝治
「前哨」
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・・・と云って火蓋を切る真似をする。うまく当れば当てられたのが代って「加八」になり当てた「加八」が庄屋になる。当らなかったら当るまで同じことを繰返すのである。「神鳴り」というのは、一人が雷神になって例えば障子の外の縁側へ出て戸をたたいて雷鳴の・・・
寺田寅彦
「追憶の冬夜」