《「えぼうし」の音変化で、烏塗 (くろぬり) の帽子の意》
1 元服した男子のかぶり物の一。古代の圭冠 (けいかん) の変化したもの。もと平絹や紗 (しゃ) などで袋形に作り、薄く漆を引いて張りをもたせたが、平安末より紙を漆で固く塗り固めて作った。貴族は平常用として、庶民は晴れの場合に用いた。階級・年齢などの別によって形と塗りを異にするようになり、立 (たて) 烏帽子・風折 (かざおり) 烏帽子・侍烏帽子・引立 (ひきたて) 烏帽子・揉 (もみ) 烏帽子などの区別が生じた。
2 紋所の名。1をかたどったもの。
出典:青空文庫
・・・それに萎えた揉烏帽子をかけたのが、この頃評判の高い鳥羽僧正の絵巻の・・・ 芥川竜之介「運」
・・・りも嬉しかったのは、烏帽子さえかぶらない土人の男女が、俊寛様の御姿・・・ 芥川竜之介「俊寛」
・・・朦朧とはしながらも、烏帽子の紐を長くむすび下げた物ごしは満更狐狸の・・・ 芥川竜之介「道祖問答」