-
・・・ 白い無地の封筒に入れたプクーンとしたのをすぐ前のポストに入れに自分で出かけた。 中へ落ちて行くのを聞き届けてから一寸の間門の前に立って、けむった様な屋敷町を見通した。 近所に住んで居る或る只の金持の昔の中門の様な門が葉桜のすき・・・
宮本百合子
「千世子(二)」
-
・・・ 紺無地の腰きりの筒っぽを着てフランネルの股引をはいて草鞋ばきで、縁側に腰をかけて居る。紺無地の筒っぽと云えば好い様だけれ共、汗と塵で白っぽくなり、襟は有るかないか分らないほどくしゃくしゃに折れ込んで、太い頸にからみついて居る。袖口は切・・・
宮本百合子
「農村」