実際は自分が何歳の時の事であったか、自分でそれを覚えて居たのではなかった。自分が四つの年の暮であったということは、後に母や姉から聞いての記憶であるらしい。 煤掃きも済み餅搗きも終えて、家の中も庭のまわりも広々と綺麗にな・・・ 伊藤左千夫 「守の家」
・・・私なぞの考えで見ると、何も家をお持ちなさるからって、暮に遣う煤掃きの煤取りから、正月飾る鏡餅のお三方まで一度に買い調えなきゃならないというものじゃなし、お竈を据えて、長火鉢を置いて、一軒のお住居をなさるにむつかしいことも何もないと思いますが・・・ 小栗風葉 「深川女房」
・・・ 三十日の日に煤掃きを若い者の居た時はさせたと云う事だけれ共、女ばかりで、寒いのにガタガタするでもないと、三、四月の暖くなるまでのばして、外廻りを村の者に一通り掃いてもらった。いつもいつも煤掃きじゃ、障子の張りかえじゃ、自分の部屋の大掃・・・ 宮本百合子 「農村」
出典:青空文庫