・・・汽笛の声。熱田の八剣森陰より伏し拝みてセメント会社の煙突に白湾子と焼芋かじりながらこのあたりを徘徊せし当時を思い浮べては宮川行の夜船の寒さ。さては五十鈴の流れ二見の浜など昔の草枕にて居眠りの夢を結ばんとすれどもならず。大府岡崎御油なんど昔し・・・ 寺田寅彦 「東上記」
・・・と云われている。熱田五郎氏の感想がひかれて、若い人たちは、「自己一身のうちに労働者的な集団生活と小市民的な個人生活との二重性をはっきりみとめ」「党生活と私生活との二重性の」「統一を一作家の資格においてなしとげたいと希っている。」その当然の希・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
・・・つづいて熱田五郎「さむい窓」、林米子「矢車草」など、職場に働いている労働者作家の作品を発表しはじめるとともに、徳永直「妻よねむれ」、宮本百合子「播州平野」などをのせはじめた。 永井荷風によって出発したジャーナリズムは、インフレーションの・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
出典:青空文庫