・・・工兵隊は引つづき毎日爆薬で、やけあとのたてもののだん片なぞを、どんどんこわしていました。九階から上が地震でくずれ落ちた浅草の十二階もばく破されてしまいました。こうして片づけられていく焼けあとには、片はしからどんどんかり小屋をたてて、もとの商・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・ 光の加減で烏瓜の花が一度に開くように、赤外光線でも送ると一度に爆薬が破裂するような仕掛も考えられる。鳳仙花の実が一定時間の後に独りではじける。あれと似たような武器も考えられるのである。しかし真似したくてもこれら植物の機巧はなかなか六か・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・ 光のかげんでからすうりの花が一度に開くように、赤外光線でも送ると一度に爆薬が破裂するような仕掛けも考えられる。鳳仙花の実が一定時間の後にひとりではじける。あれと似たような武器も考えられるのである。しかしまねしたくてもこれら植物の機巧は・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
一 震災後復興の第一歩として行なわれた浅草凌雲閣の爆破を見物に行った。工兵が数人かかって塔のねもとにコツコツ穴をうがっていた。その穴に爆薬を仕掛けて一度に倒壊させるのであったが、倒れる方向を定めるために・・・ 寺田寅彦 「LIBER STUDIORUM」
・・・ 今度、放火したり、爆薬を投げたりしたものの中の大多数は日本人の社会主義者だと云う話がある。真ギはわからないが、若し日本の社会主義者が本所深川のように、逃場もないところの細民を、あれほど多数殺し家をやき、結局、軍備の有難さを思わせるよう・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・かり仰せられていらせられたが度重なる毎にはお二人のお心が荒立って、力ずくでも と法王様がついお洩しになったのをお気のつかぬ間に陛下がお伝え知りなされたのが事の始りで今ではもう火をかけた爆薬の様にまことにはや危い御様子じゃとな・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
・・・それは、私に非常な好意を持っていてくれる或る人が、私の当時の心境を察し、抱いている爆薬のような企図を、大層慫慂してくれたことです。ところがその人が不用意の間に発した一言が、私には霹靂のようなショックを与えました。かえって事態は、まるで逆転し・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
・・・思想の体系が一つの物体と化して撃ち合う今世紀の音響というものは、このように爆薬の音響と等しくなったということは、この度が初めでありまた最後ではないだろうかと。それぞれ人人は何らかの思想の体系の中に自分を編入したり、されたりしたことを意識して・・・ 横光利一 「鵜飼」
出典:青空文庫