・・・最後に難陀婆羅と伝えられる牧牛の少女と話している。 政治的天才 古来政治的天才とは民衆の意志を彼自身の意志とするもののように思われていた。が、これは正反対であろう。寧ろ政治的天才とは彼自身の意志を民衆の意志とするもののこ・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・世尊さえ成道される時には、牧牛の女難陀婆羅の、乳糜の供養を受けられたではないか? もしあの時空腹のまま、畢波羅樹下に坐っていられたら、第六天の魔王波旬は、三人の魔女なぞを遣すよりも、六牙象王の味噌漬けだの、天竜八部の粕漬けだの、天竺の珍味を・・・ 芥川竜之介 「俊寛」
・・・西洋の婦人が向うから来てこれとすれちがった。牧牛会社の前までくると日が入りかかって、川端の榎の霜枯れの色が実に美しい。高阪橋を越す時東を見ると、女学生が大勢立っていると思ったが、それは海老茶色の葦を干してあるのであった。・・・ 寺田寅彦 「高知がえり」
・・・濠に隣った牧牛舎の柵の中には親牛と小牛が四、五頭、愉快そうにからだを横にゆすってはねている。自分もなんだか嬉しくなって口笛をピュッ/\と鳴らしながら飛ぶようにして帰った。 森の絵が引出す記憶には限りがない。竪一尺横一尺五寸の粗末な額縁の・・・ 寺田寅彦 「森の絵」
・・・ 役場の仕事もある事だし、複業にして居る牧牛がせわしかったりして、山岸の方へもあまりせき込んだ話はして居られないので栄蔵が仲に入った方が結局都合が好かった。 自分の職業上、相当に位置のある家から、あまり快い感情で遇されない事は、あま・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・ 牛乳屋の小僧 この桑野村で始めて牧牛を始めた石井と云う牛乳屋の家に居る小僧なのだ。 七八つの子の体をして居るが年を聞けば十二だそうでいかにも小さいなりをして居るが中々可愛い児だ。 頭も顔もひとっくるめにまん・・・ 宮本百合子 「旅へ出て」
出典:青空文庫