・・・「遼陽陥落の日に……日本の世界的発展のもっとも光栄ある日に、万人の狂喜している日に、そうしてさびしく死んで行く青年もあるのだ。事業もせずに、戦場へ兵士となってさえ行かれずに」こう思うと、その青年、田舎に埋もれた青年の志ということについて、脈・・・ 田山花袋 「『田舎教師』について」
・・・ バードが極飛行から無事に屯営に帰って来たのを皆が狂喜して迎え、機上から人々の肩の上にかつぎ上げて連れてくる。その時バードの愛犬が主人に飛びつこう飛びつこうとするのだが人々にさえぎられて近寄れず不平でむやみに駆け回っているがだれも問題に・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・このように、遂げられなかった欲望がやっと遂げられたときの狂喜と、底なしの絶望の闇に一道の希望の微光がさしはじめた瞬間の慟哭とは一見無関係のようではあるが、実は一つの階段の上層と下層とに配列されるべきものではないかと思われる。 この流涕の・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・を宣言させ、そうして狂喜した被告が被告席から海老のようにはね出して、突然の法廷侵入者田代公吉と海老のようにダンスを踊らせさえすれば、それでこの「与太者ユーモレスク、四幕、十一景」の目的の全部が完全に遂げられる訳である。 とにかくなかなか・・・ 寺田寅彦 「初冬の日記から」
・・・葉子の悲劇を解くためには、葉子が倉知をあのように愛し、自分がこれまで待っていた人が現われた、待ちに待っていた生活がやっと来た、と狂喜しながら、何故、妹や、或は古藤に向って、噂が嘘であるかのように、いわゆる潔白な自身というものを認めさせようと・・・ 宮本百合子 「「或る女」についてのノート」
・・・内に集って真理を擁護しながら議論をわき立たせるこれら一団の人々が、よりよい人間の生活の招来のために献身していること、彼等の言葉の中には彼の無言の思いも響いていることを感じ「自由を約束された囚人のような狂喜で」これらの人々に対したのであった。・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・内に集って真理を擁護しながら議論をわき立たせるこれら一団の人々が、よりよい人間の生活の招来のために献身していること、彼等の言葉の中には彼の無言の思いも響いていることを感じ、自由を約束された囚人のような狂喜でこれらの人々に対したのであった。同・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・ このチフリスで、ゴーリキイは初恋のオリガがパリから二年前よりさらに美しくなり、良人をのこして帰って来ることを知った。狂喜のあまり彼は卒倒した。 ニージュニイに帰った。ゴーリキイは月二ルーブリのひどい離家をかりて、オリガとその小さい・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・そのことを知った時、この頑丈な若者は狂喜のあまり生れて初めて卒倒した。 ゴーリキイは真直ぐ、ニージュニへ帰った。そして月二留の家賃で或る家のひどい離家、というより棄てられた浴室を借り、オリガとその娘との三人暮しがはじめられた。 それ・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
・・・ かの皮肉なバアナアド・ショオをして心からの讃美と狂喜とをなさしめたエレオノラ・デュウゼ。 僕はシモンズ氏によって今少しくこの慕わしい女優の芸術を讃美しようと思う。 デュウゼは世界のあらゆる女優よりも複雑な底のある性格をもってい・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
出典:青空文庫