・・・南宗を脱せんとせしは南宗の粗鬆なる筆法、狭隘なる規模がよく自己の美想を現わすを得ざりしがためならん。彼は俳句に得たると同じ趣味を絵画に現わしたり、もとより古人の粉本を摸し意匠を剽竊することをなさざりき。あるいは田舎の風光、山村の景色等自己の・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・然るに私の奉ずる神学とは然く狭隘なるものではない。私の奉ずる神学はただ二言にして尽す。ただ一なるまことの神はいまし給う、それから神の摂理ははかるべからずと斯うである。これに賛せざる諸君よ、諸君は尚かの中世の煩瑣哲学の残骸を以てこの明るく楽し・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ 純文学、私小説は、その語りてである知識人の社会生活の狭隘化と弱化につれて貧困になっているのであるから、その不満・反省の一形態として、横光氏の所論は反響をもった。共感は自意識の問題や、近代人の偶然性の説明に対する漠然とした疑いを含みつつ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・教育者が、小学校時代から、女性を性的生活以外の範囲に踏み出させない狭隘な教育の※木に掛けて、憐れにも生気を失った青年女子を育て上げて置きながら、其に向って、其那お前は価値が無いと冷酷にも批判するのは、余り無思慮ではございますまいか。男性が長・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ヒューマニズムがこんにちの現実の中で持っている健全性への可能は、文学の視野をすでにその発展のためには、ある意味で狭隘化している文壇から、もっとひろびろとした生のままの人間的情熱の歴史的課題そのものの中へひらき得る予想にかかっている。「現代ヒ・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・ 芸術の永遠性ということをいわれるとすれば、それは自己肯定の狭隘を破って、経験された事象が前後につづいて動いている尨大な歴史の上に照らし出され、しかも内容の一つ一つが具体的なそのときの真実にみたされている場合である。 日本の精神が雄・・・ 宮本百合子 「文学は常に具体的」
出典:青空文庫