・・・ そう理詰めに言うと、十吉は、「それもそうだな」 と、ひとごとのように感心していたが、急に、「あ、そうだ、煙草だけじゃない。たまに珈琲も飲む」「砂糖がよく廻るね」「闇屋が持って来るんだが、ない時はサッカリンを使う」・・・ 織田作之助 「鬼」
・・・その証拠に……と言うのは、ひどく理詰めな言い方だが、お千鶴はおれに惚れていたのだ。いや、少なくとも、おれはそううぬぼれていた。その眼付きが証拠だと信じていた。もっともお千鶴は美人は美人にしろ、一等には少し無理かと思えるほどの眇眼で、本当はお・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・と云って火のわざですから、失敗せぬよう理詰めにはしますが、その時になって土を割ってみない中は何とも分りません。何だか御前で失敗するような気がすると、居ても立っても居られません。」 中村は今現に自分にも変な気がしたのであったから、主人に同・・・ 幸田露伴 「鵞鳥」
出典:青空文庫