・・・四 これは田園の新鮮な産物である。われらは田園の風と光の中からつややかな果実や、青い蔬菜といっしょにこれらの心象スケッチを世間に提供するものである。注文の多い料理店はその十二巻のセリーズの中の第一冊でまずその古風な童話として・・・ 宮沢賢治 「『注文の多い料理店』新刊案内」
・・・ 私共がすでに自然の産物である以上、その親をしたうに何の批評が入用ろう、 何の思考が入ろう。 或人は室中に何も置かない方がまとまると云う、 又、私の様に、何かしら、心をこめて集めたものとか美くしいものがなければ、その部屋には・・・ 宮本百合子 「雨滴」
・・・石炭、石油の物語は鉱物とともに現代の生産の根を握っている天然の産物だが、研究社学生文庫の「我等の住む大地」は科学的なところから地球の鉱物を語っている。文学はこれらの天然の産物が人間社会の関係の中で人に働かされまた人を動かしている姿において描・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・ 此は、二人の人間の精神的産物は、二つの傾向の中間であると云う点にあたる。 精神的の結合は、その二人が結合した事によって、より高い価値を生ぜしむる点が重要である。 黄銅時代の為に、 トルストイの性慾論中より、・・・ 宮本百合子 「結婚に関し、レークジョージ、雑」
・・・つまりそれぞれの国は気候も違い、地理的条件が違い、即ち海に近いところ、砂漠ばかりのところ、山地などではそれぞれ天然の産物も違うから特殊な文化がそれらの地理的な特色によって、変化を受けるという意味である。なるほど、同じ日本でも山にかこまれた奥・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・うに文化再生のためにネロが必要であり、狂信者・専制者が必要であるという風に解するか、小林氏のように、「或る古典的作品が示す及びがたい規範的性格とは取りもなおさず、僕等が眺める当の作品を原因とする憧憬の産物に他ならない」と解するか。そのような・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・いる時、その人口の男女比率で婦人が三百万人も多い時、これらの勤労する全人民を、人口の半分以上の婦人のよろこびや悲しみや希望を表現する人間の表情としての文化が昔のままの少数の人、あるいは独占的営利主義の産物だけでありえようか。文化会議は基本的・・・ 宮本百合子 「明瞭で誠実な情熱」
・・・この特徴はニグロ・アフリカのあらゆる文化産物に現われている。アフリカの民族は快活で、多弁で、楽天的であるが、しかしその精神的な表現の様式は、今日も昔も同じくまじめで厳粛である。この様式もいつの時かに始まり、そうして後に固定したものに相違ない・・・ 和辻哲郎 「アフリカの文化」
・・・能楽が今でも日本文化の一つの代表的な産物として世界に提供し得られるものであるとすれば、その内の少なからぬ部分の創作者である世阿弥は、世界的な作家として認められなくてはなるまい。のみならず世阿弥は、能楽に関する理論においても、実に優秀な数々の・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・ これらのことを思うとき、それぞれの文化産物が、それに固有な様式の理解のもとに鑑賞されねばならぬことを痛感する。街路樹もそれぞれに様式を持っている。城のごときモニュメンタルな営造物は一層そうである。人はそれぞれの時代的、風土的な特殊の様・・・ 和辻哲郎 「城」
出典:青空文庫