・・・自分の鈍重な田舎っぺいを、明確に、思い知ったのは、つい最近の事なのですからね。もっとも今では、自分のこの野暮ったさを、そんなに恥じてもいませんけれど。 学生時代の写真は、この三枚だけです。この後の三、四年間の生活は滅茶苦茶で、写真をとっ・・・ 太宰治 「小さいアルバム」
・・・、作者の真意はどうあろうと、結果に於いては、汚い手前味噌になるのではあるまいか、映画であったら、まず予告篇とでもいったところか、見え透いていますよ、いかに伏目になって謙譲の美徳とやらを装って見せても、田舎っぺいの図々しさ、何を言い出すのかと・・・ 太宰治 「鉄面皮」
・・・人生におけるこの味いかた、この田舎っぺえさが藤村にあっては骨子をなしている。 私は、何だか藤村においては都会の小市民的なものの底から根づよい中農性ががんばり、顔を出しているように思います。どうかしら。それが彼の根本的の押しとなって生存せ・・・ 宮本百合子 「「夜明け前」についての私信」
出典:青空文庫