出典:青空文庫
・・・蓋し女大学の記者は有名なる大先生なれども、一切万事支那流より割出して立論するが故に、男尊女卑の癖は免かる可らず。実際の真面目を言えば、常に能く夜を守らずして内を外にし、動もすれば人を叱倒し人を虐待するが如き悪風は男子の方にこそ多けれども、其・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・旧説は両性の関係を律するに専ら形式を以てせんとし、我輩は人生の天然に従て其交情を全うせんとするものなれば、所謂儒流の故老輩が百千年来形式の習慣に養われて恰も第二の性を成し、男尊女卑の陋習に安んじて遂に悟ることを知らざるも固より其処なり、文明・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・様々の風波を起こして家人の情を痛ましめ、以てその私徳の発達を妨げ、不孝の子を生じ、不悌不友の兄弟姉妹を作るは、固より免るべからざるの結果にして、怪しむに足らざる所なれども、ここに最も憐れむべきは、家に男尊女卑の悪習を醸して、子孫に圧制卑屈の・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・ 婦人を男と区別しては考えていない、ということは、男尊女卑的な過去の伝習に対して、何歩か歩み出された考えかたである。けれども、単純に男と女とがかりに平等であったとして、それで社会の幸福と女の幸福とは創り出されて行くものだろうか。かりに男・・・ 宮本百合子 「女性の現実」
・・・万葉集以前の古事記や日本書紀の中で、最初に描かれた女性であるイザナミノミコトは、古事記を編纂させた人は女帝であったにもかかわらず、それを書いた博士たちの儒教風な観念によって、男尊女卑の立場においてかかれている。 万葉集は、この歌集の出来・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・ 若し、東洋の女性が不当に圧迫せられ、退嬰した状態を、男尊女卑と云うならば、確に西洋の人間は、女尊男卑であると云えましょう。まして、米国人は、その点を、特に強調して伝えられていると思います。 過去に於て中世の騎士気質の伝統を受けてい・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・東洋にばかり根を張ったとされる牢のような家族制度、又は、男尊女卑の悪風は、時と云う偉大な裁きてが、順次に枯す根なら枯してくれます。女性の職業的困難がそれ等に関っているばかりであるなら、忍耐さえ知っていれば、自然に解決されると云っても誇張では・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
・・・ブルジョアは、女を搾取しつづけるために、封建的な男尊女卑の考えかたを、男の労働者に宣伝するばかりではない。女の中へまで宣言しているのだ。 ソヴェトに対する逆宣伝を勇敢にハネつけろ! そして一日も早く、ソヴェト同盟の女が獲得した幸福を、わ・・・ 宮本百合子 「ひとごとではない」
・・・ しかもブルジョア社会文化は、いかに表面を種々様々の花束・手套・行儀作法でとりかざろうとも、本質において男尊女卑であり、婦人の性はその特殊性をも十分晴れやかにのばし得る形態において同位ではない。それ故進歩的思索を可能とする婦人は、先ず家・・・ 宮本百合子 「婦人作家は何故道徳家か? そして何故男の美が描けぬか?」
・・・ 女と男との地位は、ひどく男尊女卑だった。人民――労働者農民は、気の向いた時に彼等を擲りつけることの出来る主人をもっていた。主人の樺の枝の鞭の前には平伏しなければならない小作人でも、自分の小屋では主人だった。 彼が擲りつけても誰から・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」