・・・長兄は、二十五歳で町長さんになり、少し政治の実際を練習して、それから三十一歳で、県会議員になりました。全国で一ばん若年の県会議員だったそうで、新聞には、A県の近衛公とされて、漫画なども出てたいへん人気がありました。 長兄は、それでも、い・・・ 太宰治 「兄たち」
・・・こんどは町長さんを連れて来ていましたよ。ちょっと、手数のかかる用事らしい。」 兄は時々、東京へやって来る。けれども私には絶対に逢わない事になっているのだ。「くにへ行っても、兄さんに逢えないとなると、だいぶ張合いが無くなりますね。」私・・・ 太宰治 「帰去来」
・・・二十五歳で町長、重役頭取。二十九歳で県会議員。男ぶりといい、頭脳といい、それに大へんの勉強家。愚弟太宰治氏、なかなか、つらかろと御推察申しあげます。ほんとに。三日深夜。粉雪さらさら。北奥新報社整理部、辻田吉太郎。アザミの花をお好きな太宰君。・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・ なんて、力いっぱいからだまで曲げて叫んだりするもんですから、これではとてもいかんというので、プハラの町長さんも仕方なく、家来を六人連れて警察に行って、署長さんに会いました。 二人が一緒に応接室の椅子にこしかけたとき、署長さんの黄金・・・ 宮沢賢治 「毒もみのすきな署長さん」
出典:青空文庫