・・・余り畑違いの著述であるのを不思議に思って、それから間もなく塚原老人に会った時に訊くと、「大変なものを見附けられた。アレはネ……」と渋柿園老人は例の磊落な調子で、「島田の奴が馬を引張って来たので、仕方がないから有合いのものを典じて始末をつけた・・・ 内田魯庵 「三十年前の島田沼南」
・・・少しでも不満を感ずるような点があるくらいならば始めからこのような畑違いのものを書く気にはなり得なかったに相違ない。 津田君の画はまだ要するにXである。何時如何なる辺に赴くかは津田君自身にもおそらく分らないだろう。しかしその出発原点と大体・・・ 寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
・・・ もう少し実用を離れた知識でもわれわれは時に自分の畑違いの事で一通りのことを心得ておきたい場合がある。書物を読めばいいとしたところで第一どういう本を読んでいいのかそれが分らない。そういう場合にもし百貨店で買物の節に軽便安直な知識を購入出・・・ 寺田寅彦 「夏」
・・・従って上記のごときは俳壇の諸家の一粲を博するにも足りないものであろうが、しかし全然畑違いのディレッタントの放言も時に何かの参考になることもあろうかと思って、ただ心のおもむくままをしるしてみた次第である。多忙と微恙に煩わされてはなはだまとまり・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
出典:青空文庫