・・・異色あるものに難癖をつけたがる。異分子を攻撃する。実に情けない限りだ。もっとも甘やかされるよりも、たたかれる方が、たたかれた新人自身を強くすることもある。僕は処女作以来今日まで、つねにたたかれて来た。つねに一言の悪罵を以て片づけられて来た。・・・ 織田作之助 「文学的饒舌」
・・・それがいつとはなしに自然淘汰のふるいにでもかけられたかのようにいろいろな異分子が取り除かれて五と七という字数の交互的連続に移って行っている。こういう現象は決して権勢の力や金銭の力で招致することのできないものであって、やはり進化論的の意味での・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・しかし家庭の日常生活の中へ突然に、全く不連続的にそういう異分子が飛込んで来るときに、われわれはやはりそういうちぐはぐを感じない訳には行かないであろう。もっとも従来蓄音機などで始終こういうものに馴れていれば何でもないであろうが、自分の場合はそ・・・ 寺田寅彦 「ラジオ雑感」
・・・例えば鉱のように種々な異分子を含んだ自然物でなくって純金と云ったように精錬した忠臣なり孝子なりを意味しております。かく完全な模型を標榜して、それに達し得る念力をもって修養の功を積むべく余儀なくされたのが昔の徳育であります。もう少し細かく申す・・・ 夏目漱石 「文芸と道徳」
・・・ 反革命的異分子の清掃が、あらゆる部門にわたって積極的に行われはじめた。 間断なき週間制によって、五日週間を働くようになった一般勤労者は、職場職場で、生産能率増進のウダールニクを組織し、家へかえる道々には、例えばモスクワ市立銀行の屋・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
出典:青空文庫