・・・しかも、一たび神様となるや、その権威は絶対であって、片言隻句ことごとく神聖視されて、敗戦後各分野で権威や神聖への疑義が提出されているのに、文壇の権威は少しも疑われていないのは、何たる怠慢であろうか。フランスのように多くの古典を伝統として持っ・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・ 第二にその神学の解釈に至っては私の最疑義を有する所であります。殊にも摂理の解釈に至っては到底博士は信者とは云われませぬ。摂理なる観念は敢てキリスト教に限らずこれ一般宗教通有のものでありますがその解釈を誤ること我が神学博士のごときもの孰・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・を読んで、それに疑義を抱き、手控えをこしらえはじめたのは彼の二十五歳の年、大阪から江戸へ出た時代の事である。「学問のすすめ」は明治五年にあらわれて、日本の黎明に大きい光明を投げたのに、「女大学評論」と「新女大学」とは「幾十年の昔になりたる」・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・国文学研究の正道に立って、古典が文学外の力に利用されることに疑義を挾むぐらい、真に気魄をもって国文学を研究する人は尠い。明治以来今日迄のヨーロッパ文学研究の盛んなのとその影響力に対して、或る種の国文学研究者は、自身の態度として、反動である可・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・のテーマが含んでいる歴史的な方向、氏によって嘗て提唱された能動精神のその後の消長等に対する疑義をこの作品の内部に見たことを念頭において、告知板の文章を書いておられるのである。 ある文学的雰囲気というようなものや、そこの中でののびのびとし・・・ 宮本百合子 「夜叉のなげき」
出典:青空文庫