・・・女学校で、生理の時間にいろいろの皮膚病の病原菌を教わり、私は全身むず痒く、その虫やバクテリヤの写真の載っている教科書のペエジを、矢庭に引き破ってしまいたく思いました。そうして先生の無神経が、のろわしく、いいえ先生だって、平気で教えているので・・・ 太宰治 「皮膚と心」
・・・パストゥールとリスターによって病原菌が発見され、世界人類の病と死とは飛躍的に克服されるようになったが、彼女は「病原菌狂信」を嘲笑し「伝染」というものはないとした。しかし、新鮮な空気の利きめは彼女が自分の目で見、その手で開けた窓々からスクータ・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・体中に掻きむしったような痍の絶えない男の子であるから、病原菌の浸入口はどこだか分からなかった。 花房は興味ある casus だと思って、父に頼んでこの病人の治療を一人で受け持った。そしてその経過を見に、度々瓶有村の農家へ、炎天を侵して出・・・ 森鴎外 「カズイスチカ」
出典:青空文庫