・・・ 第三金時丸は、痛風にかかってしまった。 労働者のいない船が、バルコンを散歩するブルジョアのように、油ぎった海の上を逍遥し始めた。 機関長が石炭を運び、それを燃やした。 船長が、自ら舵器を振り、自ら運転した。 にも拘らず・・・ 葉山嘉樹 「労働者の居ない船」
・・・則ち肉類や乳汁を、あんまりたくさんたべると、リウマチスや痛風や、悪性の腫脹や、いろいろいけない結果が起るから、その病気のいやなもの、又その病気の傾向のあるものは、この団結の中に入るのであります。それですからこの派の人たちはバターやチーズも豆・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ 古本屋は東端でイギリス痛風だ。震えた字だ。 屋根にトタン板を並べた鋳鉄工作所から黒い汚水と馬糞が一緒くたに流れ出して歩道の凹みにたまっている。 内部は何があるのか解らぬ古コンクリート塀がある。 からからした夏の太陽ばかりが・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫