・・・「じつは、僕も発起人の一人となっていて、今さらこんな我儘を言ってすまないわけだが、原口君とか馬越君とかそうした親しい友人を除外した、全然出版屋政策本位の会だとすると、僕の気持としては、出席したくはないのだ。もともとそうした動機からなりた・・・ 葛西善蔵 「遁走」
・・・それから、ずっとまた御無沙汰して、その日は、親友の著書の出版記念会の発起人になってもらいに、あがったのである。御在宅であった。願いを聞きいれていただき、それから画のお話や、芥川龍之介の文学に就いてのお話などを伺った。「僕は君には意地悪くして・・・ 太宰治 「東京八景」
・・・無論発起人でないから、ずいぶん異存もあったのですが、まあ入っても差支なかろうという主意から入会しました。ところがその発会式が広い講堂で行なわれた時に、何かの機でしたろう、一人の会員が壇上に立って演説めいた事をやりました。ところが会員ではあっ・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・そしたら、その発起人の第一に、義理の兄弟である教授が名前を出していた。 云うに云えないこころもちでそれを眺めたのは、私一人だけだったろうか。こういう名流人たちの保身上の「都合」というものはいろいろはたから分らない事情があるのだろう。無力・・・ 宮本百合子 「行為の価値」
・・・ 去る十二月二十日に行われた東京ユネスコ協力会発起人会で招請状を出した新居格氏は、ユネスコの本質上この会は会員の純潔な良心に期待しなければならないと力説されました。発言した方々のすべてのことばはここに一致していました。その会の委員として・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
・・・つまり、クラブの発起人であった人々は、執筆者としての関係におかれ、クラブの実務者である櫛田ふきさんが名目上の編輯人であった。 婦人民主新聞の編輯局は、銀座裏の中部日本の一部におかれた。そしてなんとなくこれでいいのかしらと思うような出発を・・・ 宮本百合子 「その人の四年間」
出典:青空文庫