・・・一 淡島氏の祖――馬喰町の軽焼屋 椿岳及び寒月が淡島と名乗るは維新の新政に方って町人もまた苗字を戸籍に登録した時、屋号の淡島屋が世間に通りがイイというので淡島と改称したので、本姓は服部であった。かつ椿岳は維新の時、事実上淡島・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・配給だの、登録だの、そんな事は何も知らない。全然、宿屋住いでもしているような形。来客。饗応。仕事部屋にお弁当を持って出かけて、それっきり一週間も御帰宅にならない事もある。仕事、仕事、といつも騒いでいるけれども、一日に二、三枚くらいしかお出来・・・ 太宰治 「桜桃」
・・・工場の入り口にある出勤登録器のダイアル。それから昼顔の花もかすかにこれに反映するものである。直線運動としては囚徒や職工の行列、工作台上の滑走台、ジュアンヌの机の前の壁を走り上る数字の列等が著しいモチーフとして繰り返される。円形運動ではレコー・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
エジソンの蓄音機の発明が登録されたのは一八七七年でちょうど西南戦争の年であった。太平洋を隔てて起こったこの二つの出来事にはなんの関係もないようなものの、わが国の文化発達の歴史を西洋のと引き合わせてみる時の一つの目標にはなる・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
・・・と題して、連日の『時事新報』社説に登録したるが、大いに学者ならびに政治家の注意を惹き来りて、目下正に世論実際の一問題となれり。よって今、論者諸賢のため全篇通読の便利を計り、これを重刊して一冊子となすという。 明治一六年二月編者識と・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・ ロンドンで九月三日以後日々結婚登録をする者が夥しい数にのぼっていると報ぜられている。そのことも自分たちの高揚した気分からだけされているのでないことは、十分察せられる。生活ということがそこでも考えられている。 刻々の推移の中で、人間・・・ 宮本百合子 「これから結婚する人の心持」
・・・コンクリートの二階建て、産院は細民カードに登録された家庭の婦人をお産の前後二週間四十人収容できるものなのだそうだ。 そして、一緒に建つ姙婦健康相談所で、プロレタリア婦人の避姙の相談にものり、産院で子を生ませてもらっても、とうてい育てられ・・・ 宮本百合子 「「市の無料産院」と「身の上相談」」
・・・そして、そこに「全都民の指紋を登録」と三段ヌキ、トップに報道されている記事を見出した。福島のその村での結婚式の指紋とりは、偶然のことでなかった。 われわれ都民は、とられるものには、もう誰しもたんのうしきっている。とれるよりももっとどっさ・・・ 宮本百合子 「指紋」
・・・愈々アーネストと結婚登録した時、アグネスは「性を伴わない結婚」「ロマンチックな友愛」を考えていたのであった。 実際の結婚、姙娠、子供を産み食物と着物とを良人にたよってそのために永劫命令されて生きなければならない女の地獄に対する恐怖、悲痛・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・ 手持現金は一人宛百円ずつ家族の頭数だけ新円に代えられるということで、隣組に登録されることとなった。このとき、私たちの周囲には、どんな現象が起っただろうか。六人家内の家庭で、旧円が使える間の生計費をさしひいたあと、現金で六百円並べてすぐ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫