・・・あれはどうも映画師がほとんど計画的に食わせるように思われて不愉快であった。白人にとっては黒人はおそらくゼブラや疣猪とたいしてちがったものには思われてないのではないかという気がしてならない。黄色人はどの程度に思われているのかが次の問題になる。・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ロシア映画で教養も何もない農夫が最も光ったスターとして現われ、アメリカ映画でも土人のほうが白人の映画俳優の下っぱなどより比較にならぬほどいい芝居をして見せるのも同様な現象である。自然を背景とした芝居では人間もやはり自然な芝居をしなければつり・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・ 在昔、欧羅巴の白人が亜米利加に侵入してその土人を逐い、英人が印度地方大洋諸島に往来して暴行をたくましゅうしたるもその一例なり。今日西洋において仏国盛なり英国富むというといえども、その富のよってきたるところは何処にあるや。竜動に巍々たる・・・ 福沢諭吉 「教育の目的」
・・・技師は職工を何人かつれて来て、中に黒人労働者もいた。白人職工が何かのことで、議論する間もなくいきなり手を上げて黒人の仲間を殴った。彼は故郷自由の国アメリカ、黒人に対する私刑 オムスクから二時間ばかりのところに、すっかり新しい穀物輸送・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・アグネスは、自分が生きて来た経験から、自分の体の皮膚の色で、白人の社会にもある不合理、非人間性を知りつくしている。同じ白い皮をもっているからと云って、アグネスは飢餓から救われたことはなかった。若い弟が自由労働者として働いている間に、溝の中で・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
パール・バック夫人が主として中国人の生活を描いているのに対して、アリス・ホバード夫人は「揚子江」で、中国における白人の生活と闘争とを描いている。そして、この二人の作家は、永年に亙る中国での生活経験と観察との結果、それぞれに・・・ 宮本百合子 「「揚子江」」
出典:青空文庫