・・・ 十一月十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より〕 今、手紙の封をしたところへ六日附のお手紙頂きました。白水社の本のこと承知しました。夜具やタオル寝巻がお気に入ってその嬉しさは私一人ではありません。何しろ大した苦心をした人・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
今わたしの机の上に二冊の本が置かれている。一冊は最近中央公論社から出版された窪川稲子の初めての長篇小説と云うべき「くれない」である。もう一冊は、これもごく近く白水社から出た「キュリー夫人伝」である。この二冊の本は、それぞれ・・・ 宮本百合子 「はるかな道」
・・・兇悪な戦争が、訳者山内義雄氏と出版社白水社の仕事を阻んだ。六年を経て、一九四六年十一月に第八巻「一九一四年夏」第一部が出版されて、更にきょうまで三年の月日が沈黙にすごされている。「チボー家の人々」の日本語版がめぐりあったこれらの障害は、一つ・・・ 宮本百合子 「脈々として」
出典:青空文庫