・・・廟中数婦人の像あり、白皙にして甚だ端正。 三人この処に、割籠を開きて、且つ飲み且つ大に食う。その人も無げなる事、あたかも妓を傍にしたるがごとし。あまつさえ酔に乗じて、三人おのおの、その中三婦人の像を指し、勝手に選取りに、おのれに配して、・・・ 泉鏡花 「一景話題」
・・・ 前刻の蓮根市の影法師が、旅装で、白皙の紳士になり、且つ指環を、竈の火に彩られて顕われた。「おお、これは。」 名古屋に時めく大資産家の婿君で、某学校の教授と、人の知る……すなわち、以前、この蓮池邸の坊ちゃんであった。「見覚え・・・ 泉鏡花 「古狢」
・・・こういういで立ちをした白皙無髯、象牙で刻したような風貌が今でも実にはっきりと思い出されるのである。 この街頭における四方太氏のいで立ちを夏目先生に報告したら、どういうわけか先生がひどくおもしろがって腹が痛くなるほど笑われたことも思い出す・・・ 寺田寅彦 「俳諧瑣談」
出典:青空文庫