・・・婦人に経済法律とは異様にきこえるかもしれないが、その思想が皆無であるということこそ社会生活で女が無力である原因中の一大原因である。女には是非この知識がいる。「形容すれば文明女子の懐剣と云うも可なり」そして、この新興日本にふさわしい大啓蒙学者・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・教育の外貌は益々庭訓風になっているが生活の現実が刺戟する発展への翹望が、若い女性の心に皆無であろうなどとは、想像する者さえない。そのような心持の生きてに出会うということは、必しも望みなくはないのである。自身の求める恋愛の質や内容がはっきり自・・・ 宮本百合子 「成長意慾としての恋愛」
・・・戦敗後のインフレーションと食糧危機に当って、その国の無産婦女子の生活が惨憺たるものにならなかった例は、ほとんど皆無であることを。 さらに、世界の現実は、はっきりと示している。一般失業問題が深刻化して来ると、その中でも女子失業者の日々は実・・・ 宮本百合子 「人間の道義」
・・・ 人類の歴史の発展において、迂遠なる大道である芸術の路上で、宙がえりやとんぼがえりをいくらしたとて、自他ともに益することは皆無である。少くとも数種の著作をもつ日本の作家や評論家が、不分明な日本語を操っていたうちはともかくそれぞれの立場か・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
・・・婦人に経済法律とは異様にきこえるかもしれないが、その思想が皆無であるということこそ社会生活で女の無力である原因中の一大原因である。女には是非この知識がいる。「形容すれば文明女子の懐剣と云うも可なり」といっている福沢諭吉の言葉は、爾来四十余年・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・権力に強制だけあって誠実の皆無であったこと。人間に対する真実の拠り所が心の内で失われた感じ。その虚無的な心持をどこへ、どう建て直すべきだろうか。人民に絶対服従を強いて来たこれまでの抑圧は、彼に正当な人民の権利の自覚に立戻って自分の破滅を救う・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫