・・・町の高みには皇族や華族の邸に並んで、立派な門構えの家が、夜になると古風な瓦斯燈の点く静かな道を挾んで立ち並んでいた。深い樹立のなかには教会の尖塔が聳えていたり、外国の公使館の旗がヴィラ風な屋根の上にひるがえっていたりするのが見えた。しかしそ・・・ 梶井基次郎 「ある崖上の感情」
・・・ 皇族の方々のおんうち、東京でおやしきがお焼けになった方もおありになりましたが、でも幸にいずれもおけがもなくておすみになりましたが、鎌倉では山階宮妃佐紀子女王殿下が御圧死になり、閑院宮寛子女王殿下が小田原の御用邸の倒かいで、東久邇宮師正・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・日本の伝統的な皇族への感情の習慣は、ナンセンスそのものを通じて、偶像を否定しきっていない心理を温存させてゆく。笑いや優越感をとおって屈従に近づけられてゆくのである。 ヴァイニング夫人の「皇太子の教育」と題される文章が「皇太子殿下の御教育・・・ 宮本百合子 「ジャーナリズムの航路」
・・・ 三笠宮が人間皇族としての文化代表であるらしいけれども、彼の文化性はこんにち心ある人々に冷汗をかかせる。『スタイル』という婦人のモード雑誌の新年号にアンケートがある。ラヴ・レターをお書きになったことがお有りですか。すましていてすべってこ・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・ だいたい生活能力のあたえられずに生きてきた皇族の今日の生活は、実際ひどいものであると思います。その生活能力のないという現実と、同時に日本の人びとの感情のなかにまだまぼろしをのこしている「宮様」のありがたさに対する利用価値とが、からみあ・・・ 宮本百合子 「ファシズムは生きている」
出典:青空文庫