・・・さきでも目障りになったろう。やがて夜中の三時過ぎ、天守下の坂は長いからね、坂の途中で見失ったが、見失った時の後姿を一番はっきりと覚えている。だから、その人が淵で死んだとすると、一旦町へ下りて、もう一度、坂を引返した事になるんだね。 ただ・・・ 泉鏡花 「縷紅新草」
・・・機会さえあればそう云った目障りなものを除き去ろう撲滅しようとかゝってるんだからね。それで今度のことでは、Yは僕のこともひどく憤慨してるそうだよ。……小田のような貧乏人から、香奠なんか貰うことになったのも、皆なKのせいだというんでね。かと云っ・・・ 葛西善蔵 「子をつれて」
・・・世間にはこの目標を目障りだと言って見まいとするものもあるが、自分にはどうしても見えると言う方が正直としか思われない。従って今のところ、もし私の知識で人生の理想標榜というようなものを立てよというなら、まずさしあたりこれを持って来る。人生の理想・・・ 島村抱月 「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」
出典:青空文庫