・・・劇作家または小説家としては縦令第二流を下らないでも第一流の巨匠でなかった事を肯て直言する。何事にも率先して立派なお手本を見せてくれた開拓者ではあったが、決して大成した作家ではなかった。 が、考証はマダ僅に足を踏掛けたばかりであっても、そ・・・ 内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
・・・私は公平無偏見なる坪内君であるが故に少しも憚からずに直言する。 けれども『書生気質』や『妹と背鏡』に堂々と署名した「文学士春の屋おぼろ」の名がドレほど世の中に対して威力があったか知れぬ。当時の文学士は今の文学博士よりは十層倍の権威があっ・・・ 内田魯庵 「明治の文学の開拓者」
・・・封建時代に、君主にその非行を直言しようと決心した臣下は、いつも切腹を覚悟しなければならなかった。「直諫の士」が戦場の勇士よりも、ある場合にはより勇気ある武士とされた理由である。 日本の人民は、東條時代を通じて、もっとも非合理野蛮な侵略主・・・ 宮本百合子 「地球はまわる」
・・・一家中に、主君に直言するごとき家来は、五人か三人くらいしかないであろう。大部分は軽薄をいうのが通例である。それを心得ていないで怒るというのは、ばかというほかはない。 大将がばかであるゆえに起こってくる結果は、同じようなばか者を重用すると・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫