・・・ 然るに彼の講和論者たる勝安房氏の輩は、幕府の武士用うべからずといい、薩長兵の鋒敵すべからずといい、社会の安寧害すべからずといい、主公の身の上危しといい、或は言を大にして墻に鬩ぐの禍は外交の策にあらずなど、百方周旋するのみならず、時とし・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・ガンベッタの兵が、あるとき突撃をし掛けて鋒が鈍った。ガンベッタが喇叭を吹けと云った。そしたら進撃の譜は吹かないで、rveil の譜を吹いた。イタリア人は生死の境に立っていても、遊びの心持がある。兎に角木村のためには何をするのも遊びである。そ・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・しかし献身のうちに潜む反抗の鋒は、いちとことばを交えた佐佐のみではなく、書院にいた役人一同の胸をも刺した。 ―――――――――――――――― 城代も両奉行もいちを「変な小娘だ」と感じて、その感じには物でも憑いているので・・・ 森鴎外 「最後の一句」
・・・京都の祇園祭りの鋒の山車の引き方はその幽かな遺習であるかもしれない。大阪城の巨石のごときは何百人何千人の力を一つの気合いに合わせなくては一尺を動かすこともできなかったであろう。それでもまだどうして動かせたか見当のつかないほどの巨石がある。そ・・・ 和辻哲郎 「城」
出典:青空文庫