・・・他の動物の組織でこんなに伸長されてそれで破裂しないものがあろうとはちょっと思われないようである。もっとも胎生動物の母胎の伸縮も同様な例としてあげられるかもしれないが、しかしこの蛇のように僅少な時間にこんなに自由に伸びるのは全く珍しいと言わな・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・ 光の加減で烏瓜の花が一度に開くように、赤外光線でも送ると一度に爆薬が破裂するような仕掛も考えられる。鳳仙花の実が一定時間の後に独りではじける。あれと似たような武器も考えられるのである。しかし真似したくてもこれら植物の機巧はなかなか六か・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・ 光のかげんでからすうりの花が一度に開くように、赤外光線でも送ると一度に爆薬が破裂するような仕掛けも考えられる。鳳仙花の実が一定時間の後にひとりではじける。あれと似たような武器も考えられるのである。しかしまねしたくてもこれら植物の機巧は・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
・・・ だんだん目が馴れて来ると弾が上がって行く途中の経路を明瞭に認める事が出来る、そして破裂する時に、先ず一方へ閃光のように迸り出る火焔も見え、外被が両分して飛び分れるところも明らかに見る事が出来る。風の影響もあるだろうが、それよりもむしろ・・・ 寺田寅彦 「雑記(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・たとえかなり真空になってもゴム球か膀胱か何かのように脚部の破裂する事はありそうもない。これは明らかに強風のために途上の木竹片あるいは砂粒のごときものが高速度で衝突するために皮膚が截断されるのである。旋風内の最高風速はよくはわから・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・それが突然破裂すると危険はもう身に迫っている。しかし危険が現実になればもう少しも気味のわるい恐ろしさはない。 病院の蒸気ストーブは数時間たつとだんだんに冷えて来る。冷えきったころにはまた前のような音がして再び送られて来る蒸気で暖められる・・・ 寺田寅彦 「病院の夜明けの物音」
・・・ 街を歩いている時に通り合せた荷車の圧搾ガス容器が破裂してそのために負傷するといったような災厄が四十二歳前後に特別に多かろうと思われる理由は容易には考えられない。しかしそれほど偶然的でない色々な災難の源を奥へ奥へ捜って行った時に、意外な・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
・・・熾烈な日光が之を熱して更に熱する時、冷却せる雨水の注射に因って、一大破裂を来たしたかと想う雷鳴は、ぱりぱりと乾燥した音響を無辺際に伝いて、軈て其玻璃器の大破片が落下したかと思われる音響が、ずしんと大地をゆるがして更にどろどろと遠く消散する。・・・ 長塚節 「太十と其犬」
・・・千里の深きより来る地震の秒を刻み分を刻んで押し寄せるなと心付けばそれが夜鴉の城の真下で破裂したかと思う響がする。――シーワルドの眉は毛虫を撲ちたるが如く反り返る。――櫓の窓から黒烟りが吹き出す。夜の中に夜よりも黒き烟りがむくむくと吹き出す。・・・ 夏目漱石 「幻影の盾」
・・・これを船底にたたきつけると、パチンと腹の皮が破裂するのだが、それも可哀そうなのでほっておいた。ところが、いつまで経ってもふくれあがったままで怒っている。友人が笑って、鈎の先で腹に穴を開けたら、プスウと空気の抜ける音がして、破れた風船のように・・・ 火野葦平 「ゲテ魚好き」
出典:青空文庫