・・・たとえば太古では世界は地、水、火、風の四からなりたっていると考えたが、その後化学的元素というものが確定され、漸次に新元素が発見され今は八十余の元素がいろいろ組合わされてあらゆる物質を構成していると考うるようになった、つい近頃までは元素は永久・・・ 寺田寅彦 「研究的態度の養成」
・・・こんなのんびりした世界でさえも、自分の手でしっかり握っていない限り私有物の所有権は確定しないものと見える。してみるとやっぱり自分の腕以外にたよりになる財産はないかもしれない。 ゴルフもだんだん見ているとなかなか六かしい複雑な技術だという・・・ 寺田寅彦 「ゴルフ随行記」
・・・的の一点に存在するものと仮定しても、また現在の地震計がどれほど完全であると仮定しても、複雑な地殻を通過して来る地震波の経路を判定すべき予備知識の極めて貧弱な現在の地震学の力で、その点を方数里の区域内に確定する事がどうして出来よう。 いわ・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・えが先験的必然のものなるにかかわらず自分はこれを理解し得ずとの悲観を懐 二 さて従来の科学の立場より考えて、すべての主要原因が与えられたりと仮定すれば結果は常に単義的に確定すべきか。これはやや注意深き考慮を要・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・ 机や椅子の足は何も四本でなくても三本でちゃんと役に立つ、のみならず四本にするとどれか一本は遊んでいて安定位置が不確定になる恐れがあるというのは物理学初歩で教わることである。しかしその合理的な三本足よりも不合理な四本足が最も普通に行なわ・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ それはとにかく、こういう弾丸が脳を貫通していて、それが絶対になんらの影響をも人間に与えないかという疑問に対しては現代の科学では遺憾ながら確定的な返答ができない。従ってそれがなんらの影響もないと断言する根拠ももちろんないのである。 ・・・ 寺田寅彦 「蒸発皿」
・・・そこにはともかくも一般政治から独立した恒久的観測研究の系統が永い以前から確定されており、その上に当代の有名な学者の数々を聚めているのであるから、この際思い切って気象台の観測事業の範囲を徹底的に拡張して、そうして前述のごときあらゆる天災の根本・・・ 寺田寅彦 「新春偶語」
・・・それがために後日できそこないの汽船をこしらえて恥をかくであろうことの厄運を免れた代わりに、将来下手な物理をこね回しては物笑いの種をまくべき運命がその時に確定してしまったわけである。しかし先生にその責任をもって行くわけでは毛頭ない。それどころ・・・ 寺田寅彦 「田丸先生の追憶」
・・・の著作権が何人の手に専有せられているかは、今日に至るまで未だ曾て法律上には確定せられていないものと見ねばならない。博文館が強いて拙著の著作権専有を主張したいならば、該書出版後今日に至るまで凡二十余年の間に、一応その相談を僕に向ってなすべき筈・・・ 永井荷風 「申訳」
・・・日本時間で十一月四日の午前、トルーマン当選確定となったあと、東京のあちこちの印刷屋に駈けつけてとりいそぎ目下進行中の新年号の雑誌の特輯の中から大統領ときめこんでとりあつかったデューイの、或はデューイ氏に関する記事のさしかえをしなければならな・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
出典:青空文庫