・・・「中共の確定的勝利」は、地球上もっとも大きい人口をもつ中華人民共和国の誕生によって、日本人民をこめるアジアの未来の運命の方向が決定的に変革された人類史上のできごとである。そういう内容のことがらを、政府の労働者階級抑圧のためのねつ造が大き・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・或る人は、いやそれはしないが、桜の園は確定したそうだと云う。私共は何時、何処で、チェホフの何が観られるものか、全然知ることができなかったのであった。 切符売場には、既に幾条も前売切符を買うための人列がうねくっていた。切符はどちらかといえ・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・ 明治二十年以後の反動期に入ると、近代国家として日本の社会の一定の方向が確定したとともに、婦人に求めてゆく向上の社会的方向もほぼ固定しはじめた。当時日進月歩であった新日本の足どりにおくれて手足まといとならない範囲に開化して、しかも過去の・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・計画に入れてはいたが、ドン・バスほど確定的に考えていなかった。廻れたら廻ろう。その程度であった。それがグルジアの首府チフリスに三日いるうちに、バクー行を実現することになった。この動機の一端が、今になって考えると笑えるようなところにあるのであ・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・ そして、クリーゲル一行七人かが、最近日本へ出かけることに略確定したと云った。歌舞伎がモスクワへ来たおかえしみたいな意味なのだそうだ。 ――クリーゲルは何しろ「人民芸術家」だからきっといいでしょう。 わたしは、日本の大衆がソヴェ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・もう容疑ではなくて確定している。やらないといったってもう共同正犯だ。共同正犯は、無期又は死刑だ。それでは一体私のどこがそれに該当するのかということをききましたとき、それはいえない、お前の胸にきいてみろという。私は何も関係していない。」「そし・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・そういう人間の性格の確定の図どりの上に、はじめて、諸関係は益々紛糾し得るのであるし利害は益々錯雑し、近代そのものの複雑を示して展開する可能をもったのである。 ディケンズはクリスマス・カロールの中で、主人公をクリスマスの晩に転心させ、俄に・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
・・・ 存在そのものが不確定のようなどっさりの男たち。ぐらぐらしていたり、ほかのものにとけこんでいて境がわからなかったり。○愛ということを一ぺんも云わない。○イタリアの情熱 自立の満足を一気にもとめる情熱情熱・・・ 宮本百合子 「無題(十三)」
・・・が藤原末期になるにつれて荘園の管理者が収穫をごまかしたり、農民の疲弊が甚しくなったりして財源は不確定になって来た。男子の任官というものも、全く藤原氏の権力者のお手盛りであったから、下級官吏達の生涯は、始めから終りまで不安定で、一旦藤原氏の機・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・この話の内容はよくは解らないが、京都大学への転任の話が京都の教授会で確定したのは、翌年四月のことである。だからこの話が前年の十一月ごろに始まったと考えても差し支えはあるまい。いずれにしても先生は、この当時大学での講義を予期していられたのであ・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
出典:青空文庫