・・・、白々しく興覚めするほどの、生真面目なお約束なのであるが、私が、いま、このような乱暴な告白を致したのは、私は、こんな借銭未済の罪こそ犯しているが、いまだかつて、どろぼうは、致したことが無いと言うことを確言したかったからに他ならない。どろぼう・・・ 太宰治 「春の盗賊」
・・・一、医師は、決して退院の日を教えぬ。確言せぬのだ。底知れず、言を左右にする。一、新入院の者ある時には、必ず、二階の見はらしよき一室に寝かせ、電球もあかるきものとつけかえ、そうして、附き添って来た家族の者を、やや、安心させて、あくる日・・・ 太宰治 「HUMAN LOST」
・・・そうでなければ、半分以上残ってるなんて、確言できる筈はない。やった、やったんだ。よくあるやつさ。トイレットの中か、または横丁の電柱のかげで酔っていながら、残金を一枚二枚と数えて、溜息ついて、思い煩うな空飛ぶ鳥を見よ、なんて力無く呟いてさ、い・・・ 太宰治 「渡り鳥」
・・・或る種の作家は孤独にあってなし得る時代に対する道徳上の確言があることを強調しているのである。 世界文学の視野にヒューマニズムの問題が現れたのは一九三〇年からであった。然し一九三四年という年は二月のパリ騒擾事件におけるファシストの狂暴を契・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫