・・・の主筆牟多口氏は半三郎の失踪した翌日、その椽大の筆を揮って下の社説を公にした。――「三菱社員忍野半三郎氏は昨夕五時十五分、突然発狂したるが如く、常子夫人の止むるを聴かず、単身いずこにか失踪したり。同仁病院長山井博士の説によれば、忍野氏は・・・ 芥川竜之介 「馬の脚」
・・・ある新聞の社説にこの事実をあげてその原因について考察し為政当局者の反省を促している。誠に注目すべき文字である。 しかし多くの人の見るところによれば、自殺の増加の幾割かはたしかに新聞の暗示的、ないし挑発的記事の影響に因るものであろうと思わ・・・ 寺田寅彦 「藤棚の陰から」
・・・と題して、連日の『時事新報』社説に登録したるが、大いに学者ならびに政治家の注意を惹き来りて、目下正に世論実際の一問題となれり。よって今、論者諸賢のため全篇通読の便利を計り、これを重刊して一冊子となすという。 明治一六年二月編者識と・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・福沢先生その誣罔を弁じ、大いに論者の蒙を啓かんとて、教育論一篇を立案せられ、中上川先生これを筆記して、『時事新報』の社説に載録せられたるが、今これを重刊して一小冊子となし、学者の便覧に供すという。 明治一五年一一月編者識 ・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
明治十八年夏の頃、『時事新報』に「日本婦人論」と題して、婦人の身は男子と同等たるべし、夫婦家に居て、男子のみ独り快楽を専らにし独り威張るべきにあらず云々の旨を記して、数日の社説に掲げ、また十九年五月の『時事新報』「男女交際・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・芸術ウダールニクを組織する必要をその社説に発表した。 ソヴェト市民は、映画のスクリーンの上に見た、まだ雪が真白にのこっている早春の曠野で、疎らな人かげが働いているのを。測量器をかついで深い雪をこぎ、新しい集団農場の下ごしらえのために働い・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・という題で、『プラウダ』が社説として発表したジイドのソヴェト旅行記批判が、山村房次氏によって訳載された。 その文章は何月何日の『プラウダ』に出たものであったのか、執筆者の署名があったのか無かったのか、完訳であるのか抄訳であるのかそれ等の・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・読売新聞が社説「人権擁護の完全を期するために」で第一、警察官の民主化の実行、第二、地方刑罰条例の濫発への警告――売春等取締条例・公安条例など「国会で決定せず、地方自治体できめしかもムヤミにつくりたがる傾向」を批判していた。一九四八年に人権擁・・・ 宮本百合子 「修身」
・・・文芸欄に、縦令個人の署名はしてあっても、何のことわりがきもなしに載せてある説は、政治上の社説と同じようなもので、社の芸術観が出ているものと見て好かろう。そこで木村の書くものにも情調がない、木村の選択に与っている雑誌の作品にも情調がないと云う・・・ 森鴎外 「あそび」
出典:青空文庫