・・・そこには、一九二七―三〇年のモスクワでないモスクワが描かれているし、反ナチの祖国戦争で、ソヴェトの人々が人類の平和のためにどれだけかけひきぬきの犠牲をいとわなかったか、その巨大な破壊とそこからの回復のためにいかに奮闘しているかということを、・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・日本は日本の人民の祖国であり、皆がそこで真面目に働いて、愛する土地での生活を美しく、人間らしくしたいと願っているのです。 講和の出た去年の十一月下旬、新聞が集めたアンケートでは面白い事に、警視総監のような政府の役人と株屋と徳川夢声等が単・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・一九一七年以後に成長して、社会主義建設の中で青年となった新しい気質のソヴェト作家が、あらゆる人々とともにナチスに侵略された自分たちの建設祖国を、どんなに愛し、護り、そのために献身したか、まざまざと伝えられる情熱をもって「降伏なき民」はかかれ・・・ 宮本百合子 「ゴルバートフ「降伏なき民」」
・・・という一九三六年の声明に絶えずうなされながら猶且つ一般の国民の祖国を愛する真情に対しては第五列の意味をもっているケリリスの活動やドーデの活躍に余地を与えなければならなかった原因は、フランス経済・政治のどんな紛乱からであったかという事実までを・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・世界的諸関係の中に日本をおき、公の観点から洞察し、心から祖国を愛する者ならば、日本の民主化が如何に重大であるか、千万の言葉にまさる重さを理解しなければならない。 政党が、公のものであるならば、自党の得票という私的目的のために、日本人民の・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・愛すべき人民の祖国とその親愛、独特な文化への情熱をめざまされた。その愛と憧れによって彼等は勇気を与えられ、果敢であることができたのだった。一つの国が民主憲法をもち、民主的行政機構をもち、民主的労働組合と文化をもち、すべては民主的な表現で話さ・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・ 軍備の完備した国家は、自国を防禦する筈のその軍力を以て祖国を失ってしまいます。 物質の豊かな国民は、その豊かな物質に首を絞められます。 斯様にして、権利を所有するが為に却って、魂を汚す彼女等は、同時に又その豊かな――そして其を・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・そしてソヴェト同盟の人々が献身して愛する彼等の祖国、自分たちの手で、自分たちの生命で、一九一七年から築きあげて来た人民の祖国を侵略から防衛している姿を思いやったことだろう。 私の目の前には、ヴォルガ河が見えた。ヴォルガからスターリングラ・・・ 宮本百合子 「新世界の富」
・・・の歌の文句のとおり、活気をもったソヴェト作家のほとんどすべてが「東に西に、南に北に」祖国防衛のために協力した。戦争が終ったとき、これらの作家たちが、疲労を休めながら、戦争中の文学的収穫の整頓・出版に忙しかったことは想像される。そのために、ソ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・それは夢のような幻影としても、負け苦しむ幻影より喜び勝ちたい幻影の方が強力に梶を支配していた。祖国ギリシャの敗戦のとき、シラクサの城壁に迫るローマの大艦隊を、錨で釣り上げ投げつける起重機や、敵船体を焼きつける鏡の発明に夢中になったアルキメデ・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫