・・・ 前もって職業組合から切符を渡されているモスクワ中の勤労者はこの芸術座ばかりでなく全市の各劇場にわり当てられ、プロレタリアートの祝祭第二晩目をたのしく過すのである。 芸術座の出しものは「三肥大漢」だった。 エム・オー・エス・ペー・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・その国民的な祝祭が十四日祭に毎年行われる。 映画の「巴里の屋根の下」に撮されているようなごろた石を鋪道にしたような裏通りまで、カフェーの前あたりはもとより往来のあっちからこっち側へと一列ながら花電球も吊るされ、青い葉を飾った音楽師の台が・・・ 宮本百合子 「十四日祭の夜」
・・・赤旗と祝祭の飾りものの間に十数万の勤労者の跫音がとどろいた。インターナショナルの高い奏楽と、空から祝いをふりまきつつ分列する飛行機のうなりがモスクワ市をみたした。 夜一時近く赤い広場は煌々たるイルミネーションと人出だ。朝から夕方までおび・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・ブロード・ウェイが祝祭の人出と歌と酔っぱらいとで赤くそして青く茄り、顫えているような一九一八年十一月十一日の夜、そのどよめきに漂って微かな身ぶるいを感じながら、私は食べ足りた人々の正義とか人道とかいう言葉に深い深い疑問を感じた。 その時・・・ 宮本百合子 「時代と人々」
・・・一八八七年、五十九歳に達したトルストイと四十三歳のソフィヤ夫人とは銀婚式をあげ、恐らくそれは世界的大芸術家、社会改良家、哲人としての名誉にふさわしい家族的祝祭であったであろうが、トルストイは自分の日記に向ってただ一行、恐ろしい含蓄をもって書・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・ が、プロレタリアートが勝利したソヴェト同盟では、ほんとに解放されたプロレタリアート祝祭準備だ。 八時間労働がすむと工場クラブに集れ! そこでみんなが賑やかに熱心にメーデーの行列に持ち出す張り物、人形、スローガンを書いた赤いプラカー・・・ 宮本百合子 「勝利したプロレタリアのメーデー」
・・・革命十周年祝祭の歓びの亢奮とドン・バス事件に対する大衆の憤りの亢奮が新来の自分をも直ちにとらえた。ドン・バスへは是非よろう。旅行に出る前、自分は対外文化連絡協会から石炭生産組合へ紹介状を貰い、まだ地図もよく分からないモスクワの商業区域を歩き・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・二月十一日には大祝祭を行うそうである。その年に言論に対する政策が、一歩をすすめ、こういう形にまで立ち到ったことは、実に深刻な日本の物情を語っている。常識の判断にさえ耐えぬ無理の存在することが、執筆禁止の一事実でさえ最も雄弁に告白されているの・・・ 宮本百合子 「一九三七年十二月二十七日の警保局図書課のジャーナリストとの懇談会の結果」
・・・その祝祭は、様々の戦勝追憶談として華々しく新聞雑誌に連載されている。けれども、この三十年間に、われわれの住んでいる階級、社会はどのように推移して来たことであろう! ごく小さい形をとってあらわれた例をとって見ても、一方に東郷良子の女給ぐらしが・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・日本で労働運動はそのような祝祭の張りものを求める状態にはまだなっていない。その代り、こういう小さい、しかし現実的な大いに語るところのある彫刻がつくられているのだ。 日本のプロレタリア芸術運動は、文学にしろ美術にしろ共通の困難を経験し・・・ 宮本百合子 「プロレタリア美術展を観る」
出典:青空文庫