・・・されば立ち所に神罰を蒙って、瞬く暇に身を捨ちょうでの。おぬしには善い見せしめじゃ。聞かっしゃれ。」と云う声が、無数の蠅の羽音のように、四方から新蔵の耳を襲って来ました。その拍子に障子の外の竪川へ、誰とも知れず身を投げた、けたたましい水音が、・・・ 芥川竜之介 「妖婆」
・・・「関白になって、神罰を受けように」と言った。果して秀次関白が罪を得るに及んで、それに坐して近衛殿は九州の坊の津へ流され、菊亭殿は信濃へ流され、その女の一台殿は車にて渡された。恐ろしいことだ、飯綱成就の人の言葉には目に見えぬ権威があった。・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・私いちど、しのび足、かれの寝所に滑り込んで神の冠、そっとこの大頭へ載せてみたことさえございます。神罰なんぞ恐れんや。はっはっは。いっそ、その罰、拝見したいものではある!」予期の喝采、起らなかった。しんとなった。つづいてざわざわの潮ざい、「身・・・ 太宰治 「二十世紀旗手」
・・・地震か、ペストか、それともソドム、ゴモラのような神罰か、とにかく、そんなに遠くもない昔に栄えた都会が累々たる廃墟となっていて、そうして、そういうものの存在することをだれも知らないかあるいは忘れ果てていたのである。 ロプ・ノールの話や、こ・・・ 寺田寅彦 「ロプ・ノールその他」
・・・夫に逆いて天罰を受く可らずと言えば、妻を虐待して神罰を被る勿れと、我輩は言わんと欲する者なり。一 兄公女公は夫の兄弟なれば敬ふ可し。夫の親類に謗られ憎るれば舅姑の心に背て我身の為には宜からず。睦敷すればの心にも協う。又あいよめを・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
出典:青空文庫