・・・この事について幸田露伴博士の教えを請うたが、同博士がいろいろシナの書物を渉猟された結果によると釁るという文字は犠牲の血をもって祭典を挙行するという意味に使われた場合が多いようであるが、しかしとにかく、一書には鐘を鋳た後に羊の血をもってその裂・・・ 寺田寅彦 「鐘に釁る」
・・・けれども学士会院がその発見者に比較的の位置を与える工夫を講じないで、徒らに表彰の儀式を祭典の如く見せしむるため被賞者に絶対の優越権を与えるかの如き挙に出でたのは、思慮の周密と弁別の細緻を標榜する学者の所置としては、余の提供にかかる不公平の非・・・ 夏目漱石 「学者と名誉」
・・・ ドイツでは、大層盛大なワグナア祭典が行われていたり、ゲーテやシラーについて政府としての評価が語られたりしているようだ。 文化に対する理解がそこにあるとされているが、そういう国では現在青年群に与える読みものとしてそういう古典を整頓し・・・ 宮本百合子 「明日の実力の為に」
・・・ 現実のその苦しさから、意識を飛躍させようとして、たとえばある作家の作品に描かれているように、バリ島で行われている原始的な性の祭典の思い出や南方の夜のなかに浮きあがっている性器崇拝の彫刻におおわれた寺院の建物の追想にのがれても、結局・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
旅へ出て 四月の三日から七日まで私は東北の春のおそい――四方山で囲まれた小村の祖母の家へ亡祖父の祭典のために行った。 見たままを――思ったままを順序もなく書き集めた。 四日の旅をわすれたくないの・・・ 宮本百合子 「旅へ出て」
・・・ この新たに盛り上って「慎重になった民衆のサムソンは今日以後、社会の柱石を祭典の広間に揺がす代りに、穴倉の中で覆す」であろう階級勢力を、「支配するためには暗黒にとどめて置かなければならない」というバルザックの実践的な結論と、彼が法律や権・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
出典:青空文庫