-
・・・ 私営脳病院のトリック。一、この病棟、患者十五名ほどの中、三分の二は、ふつうの人格者だ。他人の財をかすめる者、又、かすめむとする者、ひとりもなかった。人を信じすぎて、ぶちこまれた。一、医師は、決して退院の日を教えぬ。確言せぬ・・・
太宰治
「HUMAN LOST」
-
・・・ 官営また私営の純粋な科学研究を目的とする研究所も少数にはある。そういう処は比較的最も自由な学者の楽天地である。しかしそういう処でも「絶対の自由」などという夢のようなものはおよそ有りそうもないようである。そういう理想郷の住民でも、時々は・・・
寺田寅彦
「学問の自由」