・・・そして、有妻の男子が他の女と通ずる事を罪悪とし、背倫の行為とし、唾棄すべき事として秋毫寛すなき従来の道徳を、無理であり、苛酷であり、自然に背くものと感じ、本来男女の関係は全く自由なものであるという原始的事実に論拠して、従来の道徳に何処までも・・・ 石川啄木 「性急な思想」
・・・その自由意志が秋毫も宇宙線に影響されないとは保証できないような気がする。 以上は言わばたわいもない春宵の空想に過ぎないのであるが、しかし、ともかくもわれわれが金城鉄壁と頼みにしている頭蓋骨を日常不断に貫通する弾丸があって、しかもほんの近・・・ 寺田寅彦 「蒸発皿」
・・・一家の盛衰に婦人の力を及ぼす其勢力の洪大なるは、之を男子に比較して秋毫の差なし。而して其家を興すは即ち婦人の智徳にして争う可らざるの事実なるに、漫に之を評して無智と言う、漫評果して漫にして取るに足らざるなり。或は婦人が戸外百般の経営に暗きが・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
出典:青空文庫