・・・等の様な賞讚は或は受けられなかったかもしれない。 時代のためも有ろう。けれ共、私は一葉女史と紅葉山人の作品にはその形式技巧や筆致の上にはこの上なく感心はしながらも、材料と思想が何だか物足りぬ。 まだ、ろくに「いろは」も書けない様なも・・・ 宮本百合子 「紅葉山人と一葉女史」
・・・ ジイドは、ソヴェトに対して抱いていた自分の信頼、称讚、喜悦をかくも深刻に痛ましく幻滅の悲哀に陥れ、労働者を欺いている者はソヴェトの一部の特権者と無能な国内・国外の阿諛者達であるとしている。「勝負はスターリンにしてやられ」民衆は悉く・・・ 宮本百合子 「こわれた鏡」
私は、最近米国の所謂文壇が、どんな作品を歓迎し称讚しているかは知らない。が、ほんの一寸でも触れて見た知識階級、又は文芸愛好者とも云うべき人々の間で、悦ばれていた二三の作家を思い出して見よう。 そう思って自分の読み度いと・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・彼が、仕事を終って、一同の感謝と称讚にこたえて、謙遜に満足そうに笑うとき、拍手を制せられない感動をひとに与えると思う。だが、そのひとが、まさに火中に身を投じて、必死の活躍をしている時、何を考えていたろう。一途に救けようとしているものを救け出・・・ 宮本百合子 「祭日ならざる日々」
・・・作品の世界は、幻想的と云われ、或は逞しき奔放さと云われ、華麗と云うような文字でも形容され、デカダンスとも云われ、あらゆる作品の当然の運命として、賞讚と同時の疑問にもさらされた。文学の作品として、かの子さんの幻想ならぬ幻想が、その世界として客・・・ 宮本百合子 「作品の血脈」
・・・を創造するということ」である、といわれている。 また、林房雄氏は「文学は復興する」の中で「囚われた大地」を称讚し「トルストイ、ドストイェフスキーの手法とともにその鋭く、はげしい精神をも正しくつたえているように思えるたしかな本格的な、小説・・・ 宮本百合子 「作家への課題」
・・・ しかし、作者としては、あくまでも初め自分がその作品によっていおうとしたことをどこまで云い遂せているかというところを動かぬかなめとして、賞讚も忠言をも摂取して行かなければなるまい。 私はこの夏、『中央公論』で森山啓氏の「プロレタ・・・ 宮本百合子 「作家への課題」
・・・の作者らしく、ジイドは、ゴーリキイやダビや、オストロフスキー、その他新社会の建設の中に生命を捧げた人々への無限の愛を表すために、自身のソヴェト旅行記をますます「いつもよしとして称讚したいものにたいして、最も厳格である」という自分の精神に従っ・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・けれども、此は私丈ではないと思う、どんな小さいことでも、芸術的の創作に力をそそぐ人は、彼等の作品を認められ、賞讚されたという場合に、仮令如何に其を押えようとしても押えられない嬉しさが来る。 有頂天にならないまでも、又、如何に謙虚に自分の・・・ 宮本百合子 「樹蔭雑記」
・・・等が与えられた称讚の性質も見遁せないものを持っている。先に文芸復興の声と共に流行した古典の研究、明治文学の見直し等が、正当な方法を否定していたために、新しい作家の新しい文学創造の養いとなり得なかったことを見て来たが、この過去への瞥見が谷崎、・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
出典:青空文庫