・・・ 谷崎潤一郎がこの作品に触れての感想で、自分も年を取ったせいか描写でゆく方法が億劫になって来たという意味の言葉を洩し、創作態度としての物語への移行が、作家としての真の発展を意味しないことを言外にこめている。当の作者がそのような自覚に立っ・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ここで一本の道の上というのは、一から二への直接の移行という意味ではない。それぞれの人の人生に向う態度の発展を語る一貫性の一内容として自覚され行為さるべきであろうという意味である。 問題はここまで来て、新しい障害に出会うと思う。何故ならば・・・ 宮本百合子 「成長意慾としての恋愛」
・・・インテリゲンチアの急速な階級的分化の必然はわかっているのであるけれども、自分はさまざまの理由からその移行ができないことについての自己嫌悪。そのような内容をもつものであったと思う。それらの人々の当時の不安は、自分たちの生活の無内容を、より積極・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・それらの人々は私の階級的移行が作家として愚かな行為であるという見解を示したのであった。今までいた場所にいて柔順しく身の廻りのことでも書いていればよいものをなまじっか新しい運動に入ったから勝手が違って書けないという風に理解した人もあったらしい・・・ 宮本百合子 「問に答えて」
・・・ルにおける今日の提唱は、決して文学における階級的主張を引こめたものではなく、それとは全く反対に、従前より更に高まった勤労階級の指導力によって、従前より更に広汎に、具体的に、政策的に、文学における階級的移行の可能性を捉えたものである。第一回全・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・過程と、その旧い歴史の中から芽ばえのびてくる次代の精神としての女主人公の階級的人間成長を辿りながら、一九二七―三〇年ごろのソヴェト同盟の社会主義の達成とするどく対比されるヨーロッパ諸国のファシズムへの移行などをも描こうとしている。そのような・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・彼女等は下層インテリゲンチャで、新しい社会生活に対して闘争する勤労階級と日常接近する地位にあり、新しい社会への移行の時期に、どこでもソヴェトのために役員となったりして働いた。従って新しい社会を描くことも早かったのです。 革命前に於けるロ・・・ 宮本百合子 「婦人作家の「不振」とその社会的原因」
・・・ 私たちの切に知りたいのは、性格にそのような動揺する暗さ明るさをもったインテリゲンチアの一団がその青年期のあるときにいろいろの矛盾を背負ったまま階級的移行をしたのは、歴史的にどのような必然によるものであったのか。そして、それから十年にわ・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・彼はその能動性によってインテリゲンチアの生活から勤労階級に移行して来た階級人であり、将来の発展性をもその点にしっかりと持っている作家であると信じて誤りはないと思う。 しかしながら、一方彼にはその出生や成長した環境及び遭遇した青年期におけ・・・ 宮本百合子 「文学における古いもの・新しいもの」
・・・ 農奴解放、それに引続く資本主義の発達に伴い、この時代ロシアには偽瞞的な自由を獲得した稍々富める農奴から転じた無学な小市民層と、主人と住家耕地を失って都会、工業地帯に移行する農奴出身の労働者層とが急速に増大した。当時からロシアの主要工業・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
出典:青空文庫