・・・の活動ぶりとは、いつも必ず同じとはいえないでしょうが、それぞれちがいながら窮極の民主主義擁護と平和のまもりでは一つの流れにとけ合ってゆきます。人民層の多様さに応じた多様な歴史的善意が、それぞれの必然によって湧きたち、そのものとしてうけ入れら・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ 自分にとって、波多野氏の方から誘惑したとかどうとか云うことは窮極の問題ではない。誘惑と云うものは、あって無いものだ。誘惑される主体さえ無ければ。 どっちが先に死の問題を持ち出したか、と云うことは、前の問題よりは重大だ。が、これとて・・・ 宮本百合子 「有島武郎の死によせて」
・・・の考えかたが、窮極の現実において「こっち」の「純粋な文学性」をどんな目にあわせることになったか、また、自分なんかは、と測定した個々の人の文学の才能や人生への確信を、どんな過程で崩壊させていったかという事実を顧みると、惨澹たるものがある。・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・官製の報道員という風な立場における作家が、窮極においては悲惨な大衆である兵士や、その家族の苛烈な運命とは遊離した存在であり、欺瞞の装飾にすぎないことが漠然とながら迫ってきたからであろう。 このことは各人各様に、さまざまの具体的な感銘を通・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・さもなければ、人間も自然の中に生れたものであるという関係からだけ自然の力と人間の交渉を見て、人間も窮極には自然に敗けるのが宇宙の必然であるという風な、科学的らしく見えるが実際は観念的な宿命論のような結論を引き出していることも少くない。やがて・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・ 彼等はいずれもそれぞれの時代、それぞれの形で、人間は不合理と紛乱と絶望の頁を経験したが、それでも猶、窮極に人間は絶望しきらず、非合理になりきらず、人生は謙遜に愛すべきものであることを語っている作家たちだ。 彼等はそれぞれの制約に対・・・ 宮本百合子 「彼等は絶望しなかった」
・・・イエスとマリアとの間には、花の香とそのかおりを吹きおくるそよ風のように微妙な心のかよいがあったにしろ、マリアを純一にし、まじりけなく行動させたのは窮極において、彼女が人間の関係のうちに見出したまともなものへの献身であった。 正義、良心、・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・ けれども、窮極に於て、自分は自分の道を踏まなければなりません。 宇宙のあらゆる善美、人類のあらゆる高貴を感じ得るのは、ただ、私自身の裡に賦与された、よさ、まこと、によってのみなされることではありますまいか。 こころよ、心よ……・・・ 宮本百合子 「偶感一語」
・・・それらが心理的であるということに問題を生じるのは、これらの心理的な現象をとく力は、窮極においてその心理の枠内にはありえないのだという事実を、承服しようとしないところにある。個々の人が個々の心理に固執している傾きがきつすぎる。その心理によりす・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・私は自分の作品が自分の窮極をめざして作っていると思ったことは、かつて一度もまだなかった。私はその場所にいる自分の段階で、出来うるかぎり最善の努力を払えば良いと思っている。次ぎの日には、次ぎの日の段階が必ずなければ、時間というものは何のための・・・ 横光利一 「作家の生活」
出典:青空文庫