・・・「そんな、突拍子ない事を言ったって、」母は、ひそかにほっとして、「さとには、わかりませんよ、ねえ、さとや。猛は、ばかげた事ばかり言っています。」「わたくしならば、」さとは、次男の役に立つ事なら、なんでも言おうと思った。母堂の当惑そう・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・それでいわゆる立体映画ができると、われわれの二つの目の間隔が急に突拍子もなくひろがったと同様な不自然な異常な効果を生ずることになり、従って映像の真実性が著しく歪曲することになるのではないかと想像される。 ともかくも、現在の映画のスクリー・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・したがって突拍子もない偉い人間すなわち模範的な忠臣孝子その他が世の中には現にいるという観念がどこかにあったに違ない。 以上の諸原因からして自然模範的の道徳を一般に強いて怪しまなかったのでありましょう。また強いられて黙っていもし、あるいは・・・ 夏目漱石 「文芸と道徳」
出典:青空文庫