・・・「馬鹿な人間は困っちまいます――魚が可哀相でございますので……そうかと言って、夜一夜、立番をしてもおられません。旦那、お寒うございます。おしめなさいまし。……そちこち御註文の時刻でございますから、何か、不手際なものでも見繕って差し上げま・・・ 泉鏡花 「眉かくしの霊」
・・・今日も林の立番だなす。」 簑を着て通りかかる人が笑って云いました。その杉には鳶色の実がなり立派な緑の枝さきからはすきとおったつめたい雨のしずくがポタリポタリと垂れました。虔十は口を大きくあけてはあはあ息をつきからだからは雨の中に湯気を立・・・ 宮沢賢治 「虔十公園林」
・・・ 若い赤衛兵が一人銃をもって、冬宮の車寄のところへ立番しながら気持よさそうに、そういう広場の朝の景色を眺めている。 一九〇五年の一月ガーポン僧正は大仕掛な民衆売渡しページェントをこの広場でやったのだ。ペトログラードの民衆はガーポン僧・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・とって、この感じを強めるにしか役立ちませんでした。二人の姉さんは小さい自分を放ぽり出して、気取って男のお友達と歩いたり、時には、「サ、いい子だから、あそこの角で誰も来ないか見て来てね」と立番をさせられたり。ロザリーに何よりいやなのは、散歩の・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
出典:青空文庫