・・・ ソロモンはこう歌いながら、大きい竪琴を掻き鳴らした。のみならず絶えず涙を流した。彼の歌は彼に似げない激越の調べを漲らせていた。妃たちや家来たちはいずれも顔を見合せたりした。が、誰もソロモンにこの歌の意味を尋ねるものはなかった。ソロ・・・ 芥川竜之介 「三つのなぜ」
・・・ これについて思い出すのは古いアッシリアの竪琴と正倉院にある箜篌との類似である。クゴはシナ音クンフーでハープと縁がある。アラビアの竪琴ジュンク。マライのゲンゴンと称する竹製の竪琴。シャムのコンヴォン。朝鮮のグムンゴまたクムンコなどが連想・・・ 寺田寅彦 「日本楽器の名称」
・・・また自刻の印章――ボート形の内に竪琴と星を刻したの――が押してある。自分の家の門や庭の芭蕉などの精密な写生があるかと思うと、裏田んぼの印象風景などもある。「くいしへ行くにはどっちですか」「神社」「アツマコート」「小女山道」「昼飯」「牛を追う・・・ 寺田寅彦 「亮の追憶」
出典:青空文庫