・・・而も、その友情が異性間に於ける場合には、自ら、同性間より微妙な節度と云うものがあります。決して、現在、日本で若い男女間の所謂交際と云うもののように、妙に陰翳があり、感情的で、危いものではありません。 通り一遍の知人である男子と、第三者を・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・p.95 英国人らしい道徳観の肥満性 ○イギリス文学における節度 道徳のキソまで手をつけようとしない。 ○ユーモアの各種の起源 ○しかしこの節度は大戦後やぶられた。やぶられつつやぶられない・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・先生は、生れつき非常に節度のある方だ。自分は感情的ではあるけれども、その人と面と向った時、親愛の言葉などを、スラスラと述べられない性質がある。従って、先生と自分との間には、嘗て一度も、互を結ぶ師弟の愛について、熱情的な言葉は交されなかった。・・・ 宮本百合子 「弟子の心」
・・・ そのように観て来て、私は日本の一般の若い女が、いつ、欧風エティケットの表面性を破っての男の節度の美、献身の美を理解し、それを求め、それらが生れるに可能な社会の条件をこしらえてゆくために努力しなければならないのはつまりは女自身であること・・・ 宮本百合子 「日本の秋色」
・・・私たちは読者として、そういう諸点については今日好意ある節度を守るのであるが、山本氏として、この作者の立て前とする範囲内で、而も、允子の棲んでいる世間並のいいこと、わるいことの評価と、允男の行動に対する歴史的な意味についての無理解とが、世俗的・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・今日でも婦人に対して、礼儀と節度のある行為を、騎士的なという表現で言われている。けれども、婦人の社会におかれた地位の本質は、このガラハートの諷刺的な物語が示すようなものであったことは疑いない。 ヨーロッパ中世における婦人は、飾りない言葉・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・彼を束縛するものはただこの満足のための功利的節度のほかに何ものもない。 しかし人はこの物質的な世界に何の不足もなく安住することができるか。愛の歓喜にある時彼はその幸福の永遠性を望まないか。官能の悦楽のあとで彼はそのはかなさに苦しまないで・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
出典:青空文庫